日本語のオノマトペ概述
2014-04-29杨朝桂
杨朝桂
【摘 要】本稿では、日本語オノマトペの名称と語義、特徴と問題点、日本語の擬音語·擬態語の歴史について検討してみる。擬態語は欧米語にはあまりはっきり現れておらず、日本でも擬音·擬態の区別をはっきり立てずに考察していた時期があった。擬音語·擬態語には各言語によって表現する対象に偏りがあることも指摘されている。擬音語·擬態語はわずか一音の違いで微妙な意味合いを表現し分けるので、使い分けて表現の効果を高めることができる。
【关键词】日本語;オノマトペ;語義;特徴;歴史
一、日本語のオノマトペの名称と語義
擬音語は動物や人間など生物の発する声音――ワンワンほえる、ピヨピヨ鳴く、キャーキャー叫ぶなど、また、生物や物体が起す物音、自然界で発せられるさまざまな音響――ゴクゴク飲む、ピシャリと閉める、ガタガタ揺れる、ざーざー降るなどを、言語音でできるだけ忠実に模倣して表現した言葉である。従って文字によって書き表すことができる。擬音語は擬声語とも言うが、擬声語は広義には音響の有無にかかわりなく、外界の事象を言語音によって象徴的に描写したものの総称としても用いられ、この意味から象徴詞、オノマトペ、写生詞、音画などの呼称もある。狭義の擬声語?擬音語についても写生、写音等、命名に試みがある。
擬音語は言葉であるから、各言語によってそれぞれの言語特有の音声条件に従って音を捕らえ表現されることになるので、表現されたものが各言語によって異なる。例えば犬のほえ声、鳥の鳴き声などが各言語によって違うことは周知の例であるが、擬音語は大体どこの言語にもある。
擬態語は欧米語にはあまりはっきり現れておらず、日本でも擬音·擬態の区別をはっきり立てずに考察していた時期があった。擬態語という名称でこれを区別したのは大島正健『国語の組織』(1914)ではないかとされる。大正、昭和と擬態語の認識が深まり、辞典として擬態語の項目を立てたのは『大辞典』(1935)で、このころからこの名称が一般的になったと言われている。
ただし、擬音語の名称を不合理不適当とする論も多く、擬貌といい、写容、模様といい、第二次大戦後にも、宮田幸一の描写詞(注2)、石黒魯平の模写語·註写語·転写語の三分類説、石垣幸雄のウツシなど、さまざまな命名が提出されている。擬態語は
生物の動作――ノソノソ歩く、ニヤニヤ笑う
様態――ドッシリ座っている、きょとんとするなど。
感覚――チクチク痛む、ムズムズ痒いなど。
感情――イライラする、どきどきするなど。
心理状態――クヨクヨ悩む、ウンザリするなど。
事象の状態、変化――キラキラ光る、ドップリ暮れる、クッキリ浮かぶ、ズンズンはかどるなどがある。
音響とは直接かかわりないものを言語音によって象徴的に表現する言葉である。日本語は擬態語の多い言語とされ、ことに心情の状態を表すものは日本語特有と言われ、金田一春彦はこれを「擬情語」と呼んでいる。
二、日本語のオノマトペの特徴と問題點
1、対象の偏り
擬音語·擬態語には各言語によって表現する対象に偏りがあることも指摘されている。牧畜民族である欧米の擬音語には家畜の鳴き声が豊富であるのに対して、日本語の場合は鳥、虫の鳴き声に詳しいなどがその例である。日本語の擬態語では、人の態度を表す語――きょろきょろ、そわそわ、ぼんやりなどが多く見られ、金田一春彦は落ち着かない心理を表すものが多いとして、いらいら、やきもき、いそいそなどを挙げている。感覚を表す語では触覚に関するものに特徴がある――かさかさ、ざらざら、ねばねば、ぐちゃぐちゃ等。擬音語?擬態語は感覚的表現の語である性格上話し言葉に多く現れるが、ことに方言には独特のもの、様々の様態のものが収集されている。
2、表記
擬音語·擬態語は元々平仮名表記であったが、中世になって狂言等あたりからカタカナ書きが目につくようになった。漢字の意味に擬音語?擬態語を当てる表記の工夫は、鎌倉期の漢語導入に伴うとされているが、特に近世から明治初期の文学にその例がいろいろある。瓦落瓦落――ガラガラ、寒粟と――ゾット、爽早.薩張――さっぱり、悵然――シオシオ、莞爾――ニコニコなど。戦前の文に残った、屹度――キット、丁度――チョウドなどもこの類と言えよう。
擬音語·擬態語の表記をカタカナにすべきか平仮名にすべきかが取り上げられたのは、戦後、新仮名遣い、新送り仮名等の制定のより日本語の表記に大変化があった時期で、昭和25年6月の国語審議会報告「国語問題要領」は、カタカナは外来語や外国の固有名詞と擬音語などに用いられるとし、終戦後の文部省小学校教科書は、擬音語がカタカナ、擬態語が平仮名を原則とした。以後現代まで一般的にはこの原則が行われるようであるが、平仮名文の中で擬態語も平仮名書きにすると読みにくい場合とか、表現に特別なニュアンスを持たせたい場合などには、カナガナ書きが領域を広げていることも指摘されている。
3、効用と問題点
擬音語·擬態語はわずか一音の違いで微妙な意味合いを表現し分けるので、使い分けて表現の効果を高めることができる。また感覚に直接働きかけていくものなので、ほかの言葉で表現しようとすると長々と説明しなければならないことも、一言で適切に直截に表現して相手の共感に訴えることができる。
文学者の中には、このような利点に着眼して、イメージの象徴に効果的に利用したり、独特のものを創造したりすることが行われ、草野心平の「蛙」の詩がよくその例にあげられる。萩原朔太郎、宮沢賢治も擬音語·擬態語に強い関心を持って巧みに使った文学者として有名である。一方、三島由紀夫などは擬声語の濫用は言語の抽象性を汚すとして排斥している。
文学作品以外には擬音語·擬態語は話し言葉に多く現れるもので、公用文や法律文、論文などにはあまり登場しないが現代では新聞雑誌にもかなり採用され、ことに見出しなどに読者の注意を引く効果を狙って用いられることが多い。これも擬音語·擬態語の直感的、直接的である点を活用している例であるが、この傾向はさらにCM、漫画、劇画と拡張し、大げさで、刺激的な新造語も加わって氾濫状態を呈している。これらは定着して慣用となっているものと異なり、個人により意図的に、さらには奇をてらって新造され一時的に流行しているものなので、本来の擬音語·擬態語と同一に扱うことには問題がある。
三、日本語の擬音語·擬態語の歴史
擬音語·擬態語の歴史は「記紀」、「萬葉」時代に溯れる。例は少ない。
1、一つの鹿、み前に立ちき。鳴く声は比比といひき (『播磨風土記』)
2、さし焼かむ小屋の醜屋に……この床の比師となるまで (『万葉集3270』)
3、釣りを以ちて……探れば……甲に掛かりて、可和羅と鳴りき (『古事記』)
4、白波の八重折が上に海人小舟波良良に浮きて(『万葉集4360』)
等。
このような例はまだ幾つかがあるが、ここでは一々挙げないことにする。上述した「比比」(ヒヒ)、「比師」(ヒシ)、「可和羅」(かワラ)、波良良(ハララ)は早期の擬音語·擬態語である。これらの語からこの時期の擬音語·擬態語の特徴が見られる。すなわち、音節上では一拍から多拍まであるが、二拍のが多い。これは後述するが、ほとんど今日までこの特徴が保っている。もう一つの特徴は語尾にラ行音が多い。
時代が発展するに伴って、言葉も絶えず発展している。中古時代に入ると、物語、日記文学は空前的栄えていた。文学体裁が豊かになってから言語表現能力も新しい飛躍を遂げた。言葉の一環としての擬音語·擬態語も新しい変化を見せた。物語と日記は仮名を用いて書いたのだから、普通の人間の喜怒哀楽を描写している、それによって、たくさんの日常生活で使う擬音語·擬態語は文学作品の中でも多く出ていた。これはまた擬音語·擬態語のこの時代においての特徴である。ほか、中古時代では、濁音、促音、撥音、長音等の表記方法はまだ発達していなかったので、本に書いてある擬音語と擬態語は実際に表現したい語と相当大きな差がある。
1、子安貝をふと握りもたれば、うれしくおぼゆるなり。『竹取物語』
2、車宿にさらにひきいれて、ほうとうちおろすを『枕草子、二五』
3、女童狐成コウコウと鳴 『今昔物語、二七』
4、人のほほと笑へば、恥かしうて『落窪物語、二』
この時代の言葉では、まだ「ん」という形式はなく、「ウ」を使って表記していた。
中世に入ると、文学作品にたくさんの擬音語·擬態語が現れた。また、嘗てなかった促音、撥音、長音も出てきた。これは当時のキリスト教の宣教師が書いた資料も証明できる。
近世に入ると、民間戯曲文学が発達した。例えば、浄瑠璃、川柳、歌舞伎、滑稽本、洒落本の中に、大量の口語が登場した。それで、擬音語·擬態語も大いに発展した。形式上でも、もう今使っている擬音語·擬態語に近い。
例:
1、敵をざっとけちらかして『平治物語』
2、肩をづんどおどりこへてぞたたかいける『平家物語、四』
3、さらば撞て見う。ジャンア、モンモンモン。『狂言、鐘の音』
【参考文献】
[1]徐一平.日本語研究[M].人民教育出版社,1994.
[2]天沼寧.擬音語.擬態語辞典[M].東京堂出版,昭和49年.
[3]浅野鶴子編,金田一春彦解説.擬音語.擬態語辞典[M].角川書店,昭和53年.
[4]白石大二.擬音語.擬態語慣用句辞典[M].東京堂出版,昭和57年.
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[6]金田一春彦,林大,柴田武.日本語百科大事典[M].大修館書店.
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[8]日本語の語彙と表現[A].鈴木孝夫.日本語講座(第4巻)[M].大修館書店,1976.
[9]金田一春彦.日本語の特質[M].日本放送出版協会,1991.